saunastory’s blog

サウナ施設を巡る旅をお届けします。読んでる皆様が整えますように。

【第3話-2】広島の熱波とお好み焼きを喰らえ!【ニュージャパンEX】

【前回のあらすじ】

広島のサウナ ニュージャパンEXのサウナ熱すぎぃ!!!🔥

 

サウナ室へ入る。
オートロウリュウが30-60分の頻度であるので湿度が高めで体感温度は85-90℃。
じわじわと蒸される。
「ところで、轟。おぬしはちらかりは何本消失させた?」
 
ちらかりとは日本各地のサウナ施設にランダムに出現する黒い閃光 のこと。
ちらかりはその周辺地域に「ちらかりウイルス」をバラまき、 人間の人体、特に脳に悪影響を及ぼすと言われている。
ちらかりを消失させる唯一の方法は
ちらかりが刺さったサウナ施設で整い、 それに呼応し覚醒したサウナ神がちらかりに攻撃をすることだ。
 
「えーと、10本ぐらいかなぁ。豪炎寺は?」
「162かな。今回のを含めてな。」
「へ、今回?今、ちらかりは見当たらないけど」
 
と、突然照明が消える。
 
「轟、見てろよ。ここのロウリュウは他とは一味違うぞ」
サウナストーンに照明が当たり、軽快なBGMが流れる。
 
じゅわあああああああああ
 
サウナストーンにオートで水が噴射される。
それに連動して天井に設置された送風機が作動。
 
ぶおおおおおおおおおお
 
体感100℃の熱波が襲い掛かる。
 
「最高の熱さ。最高の爽快感だなぁ。豪炎寺!」
「うひょ、甘い、甘すぎるぞ轟。本番はこれからだ・ZE☆」
送風機の送風が終わると、BGMが変わる。
すると再び、オートロウリュウが始まり、送風機による体感110 ℃の熱波が襲い掛かる。
 
「あちちちちちちぇぇぇぇ!!!」
「うひょひょ~!!これこれ!!たまらん熱さじゃー!!」
熱がり慌てる轟とは対照的に豪炎寺は目をキラキラさせ熱波を堪能する。
全身の皮膚に直接的な熱さがやってくる。
その熱さに轟は耐えきれなくなり、外へ出る。
 
「すまない!先に失礼するぞ少佐!!無事でいてくれよ!」
「安心しろ軍曹!私もすぐに撤収するーーー!!」
 
2人は汗を流し、水風呂へ入水。
水風呂は15℃。ユーカリヴィヒタが流入口にあり、 ほんのり良い香りがする。
 
「熱かった分、水風呂がより心地良いなぁ」
「うひょひょ!間違いないな!」
 
そして外気浴をするため、休憩室へ。
いす数脚にインフィニティチェアが2脚。
サウナ椅子とも呼ばれるほど外気浴の際にかなり人気の寝転べる椅子だ。
運よく2脚空いていたので、二人は座り込む。
「おいおい、来たぞ来たぞ!整i...」
 
整ったぁーーーーーーーーーーー
 
整いに呼応し、トタッチは黄金色に輝き出し、 右手にヴィヒタを装備。


カルピーは化け猫のような姿になり、右手にロウリュウ桶、 左手にサウナひしゃくを持つ。
 
「熱波神風!」
カルピーはトタッチの背中に向け、業炎の暴風を巻き起こす。
その勢いを利用し、トタッチがちらかりに切りかかる。
「え?ちらかり、いつの間に出現してた?」
轟は驚く。
 
「おにょおおおお!!ヴィヒタ大根斬り!!!」
ヴィヒタなのか大根なのかわからない技でちらかりを切りつける。
 
ズバン!!
 
ちらかりは半壊するも、すべてを消失することが出来なかった。
「おひょ、火力が足りてない!轟!もう1度 整いに行くぞ!次はフィンランドサウナだ!」
 
すぐさまフィンランドサウナに駆け込む。
 
体感温度は80-85℃。
このサウナはなんとほうじ茶のセルフロウリュウが可能だ。
セルフロウリュウとは自分の手でロウリュウ桶に入った水(アロマ水)をサウナストーブ上のサウナストーンにかけること。
轟は早速、ほうじ茶アロマ水をサウナストーンに2杯かける。
 
じゅわあああああああああ
 
「うひょひょ、 このヒノキの香りにほうじ茶の香ばしい香りのアクセント。 究極のハーモニー!!」

 

豪炎寺がガッツボーズをとる。
室内が狭い分、少しのロウリュウでかなり湿度も上がる。
体感温度は95-100℃ほどにまで上がる。
 
「こっちも熱くて良きやな」
 
10分後、サウナを出て2度目の水風呂に入る。
水風呂を出て休憩室へ行くも、 椅子とリクライニングチェアがともに埋まっており座れなかった。
 
「うひょひょ、そんな時はリクライニングスペースに行くぞ!」

館内着を着て、 整いかけて浮つく身体にムチを入れ上の階にあがる。
そしてリクライニングスペースにあるシートチェアに寝転ぶ。
 
「おお、ふわっふわで最高やぁ、、、」
寝転ぶとすぐに整いがやってくる。
 
整ったぁーーーーーーーーーーー
 
再び覚醒するトタッチとカルピー。
 
「にょええええええええ!もう1回くらいやがれぇぇ!!!」
1回目同様に、カルピーとの華麗な連携でちらかりに切りかかる。
 
ちらかりはみるみるうち消えていった。
無事に消失させることができた。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
 
「うひょ!いやぁ、最高に整いましたなぁ軍曹。」
「あぁ、間違いない少佐。」


ふたりは満面の笑みで語る。
 
「ところでこの後、お好み焼きでもいかね? 近くにうまいとこあるんじゃ!」
「いいね、サウナ終わりの飯ほど美味いもんはないよなぁ」
「うひょ、サウナ後は五感が冴えるらしいからな。 味覚もビンビンや!」
 
と、ふたりはお好み焼きを食べに行くことに。
 
「ぷしし、おいカルピー、質問だ! 広島のお好み焼きとかけまして、ニュージャパンの熱波ととく。 その心は?」
「ぴぇぇ、わからないでしゅぅぅぅ泣」
「けっ、なさけない!正解はどちらも『喰らえば(くらえば) 最高に気持ちいい』だ!!うまいだろ!ぎゃははは!」

「???」
 
轟たちのサウナ旅はまだまだ続く、、、

【第3話-1】広島の熱波とお好み焼きを喰らえ!【ニュージャパンEX】

あちちちちぇぇぇ!!!!


俺は今、防御力0の全裸で熱々の暴風にさらされている。
灼熱地獄にでも迷い込んだ気分だ。


「すまない!先に失礼するぞ少佐!!無事でいてくれよ!」
「安心しろ軍曹!某もすぐに撤収するーーー!!」
ここは地獄でも戦場でもない。サウナ室である。
 
俺の名前は轟大車輪。
名前に車が5つ付くが、車種はポルシェ以外覚えれない男だ。

そんな俺を嘲笑うように、 俺のまわりをうようよと目障りに飛び回るのは、全長30㎝ ほどのぶさいく面の狸。
こいつはサウナ神と呼ばれる「トタッチ」である。
とあるきっかけで轟に憑依することとなり、 ともに全国のサウナ施設を駆け巡っている。
 
そして俺は今、3年ぶりに会う親友とサウナに来ている。
「うひょ、久しぶりだなぁ轟ぃ。元気してたかぁ?あ、爪楊枝いる?」
「いらねぇよ。」
 
彼の名前は豪炎寺 火斗志。
ぼさぼさの髪の毛に、しわが付きまくりの服を着用。
陰キャラの極みと思いきや、 意外とコミュニケーション能力は高い方だ。
そして何といっても彼の最大のトレンドマークは剛毛極めし「 胸毛」である。
 
轟とは、同じ中高一貫の男子高に通っていた。
6年間、クラスが同じだったのに加え、 互いにどこかシンパシーを感じ合ったのか年月が経ってもずっと仲が良い。
 
ゴールデンウイーク、 轟同様に豪炎寺も地元広島に帰省していたため日程を合わせ、 サウナに行くことにした。
 
「ってか、豪炎寺。今、何の仕事してんの?」
「あぁ、拙者 留年したからまだ大学生じゃわ笑」
「おいって笑 ちゃんと大学行けって!」
「うひょ、サウナ行く以外に外出なんて絶対しないね!」
「(あぁ、またこいつ留年するやん)」
 
なんて話をしながら、広島の繫華街を歩く。
 
繫華街の一角に突如現れる青色の看板にでかでかと書かれた「 サウナ」の文字。
 
「うひょひょい、我らが楽園に着きましたなぁ。軍曹~。」
「あぁ、少佐。突撃しやすか?」
「あたぼうよ。行くぞぅ!」
「ニュージャパンEX」に入店する。
 
受付を済ませお金を払うと、ロッカーキーがもらえる。
そして、エレベーターで4階のロッカールームに行き館内着に着替える。
 
「相変わらずの濃い胸毛じゃのぉ」
「すごいじゃろ。豪炎寺ブラックホールとでも呼んでくれ。」
 
そんな豪炎寺の胸毛に猫のようなやつが絡まっていた。
 
「え、豪炎寺お前、、胸毛に猫絡まってるぞ.」
「ぎゃははは!!」
あまりに絡まってるので大爆笑するトタッチ。
 
「おひょ、まさかこいつが見えるのか??お主もGSだったとは奇遇だな。」
  
GSとは、GOD SOUNARの略称で、サウナ神が憑依した人間のことを指す。
 
「この猫ぽいやつは『カルピー』。そこのトタッチ同様、 サウナ神だぜ。」
「うぅ、めそめそ。僕はカルピー。よ、よよ、よろしくぅ。」
 
照れながらボソボソと自己紹介するカルピー。
それを見たトタッチ。
 
「うりゃあああ!!クヨクヨしてんじゃねぇ!! 何がめそめそだい!自分で言うやつがいるかぁぁぁ!!」
「ひええええ、ずびばぜん~~~」
 
今にも泣きそうなカルピーは豪炎寺の胸毛に隠れる。
 
「おいおい、あんまりカルピーいじめたるなよ、、、 ってかお前ら知り合いなのか??」
「うむ、2000年前にフィンランドのとあるサウナから僕ちんら サウナ神は誕生したんでい。ゆーたら兄弟だよん。」
「なるほど、てかお前らそんな昔から存在してたのか。」
驚く轟。
 
 
「うひょ、話は後でもゆっくりできるし、 とっととサウナ行きましょや」
と、いい豪炎寺らは階段を上がり浴場へ行く。
 
「おお!なんかなんかヨーロッパにありそうな宮殿感あるなぁ」
身体を洗い、露天風呂に浸かる。
 
「あぁ、二匹とも風呂浸かるととろけるんだ」
トタッチとカルピーは風呂の水面に顔の輪郭のみを残してプカプカ 浮いている。
 
「うひょ、十分温まったし サウナへ参ろうではないか!」
「出撃じゃーーー!!!」
轟たちは高温サウナへ行く。

 

後半に続く.......

【第2話-2】女性が1番美しいのは、サウナを出た後の1時間 【神戸クアハウス】

〈前回のあらすじ〉

轟 大車輪は絶世の美女 氷河水沙のバイクで神戸クアハウスへ向かう。

氷河にメロメロの轟、果たしてその乱れまくりの心を整わせることはできるのか?

 

施設に入ると、布引(ぬのびき)の水飲み場が轟たちをお出迎え。

「ここは水風呂が良いことで有名やねん!水質しか勝たん!」

ウキウキと氷河は答える。

 

「轟、ちなみにこれなんて読むかわかる?」

布引の水飲みを指さす。

「は、簡単だよ。ふいんの水だろ?」

威風堂々答える。

「ドヤ顔で間違えないでよ。正解は『ぬのびき』よ!」

「(ブフゥゥ)」

思わず吹き出すトタッチ。

 

とか話している間に受付で鍵を受け取る。

「じゃ、後でね!水風呂の感想聞かせてなぁ」

 


早速、浴場へ。

身体を洗いまずは重曹湯で体を温める。

「ふあああ、めちゃ気持ちいいいい」

「ぐふふふふ、重曹槽は美容の湯とも呼ばれるほど、 美肌効果の高い源泉らしいじょ!」

あまりの気持ちよさに液状化するトタッチ。

もはや原型がほぼなく、 ぶさいくな面だけが水面をぷかぷか浮いている。

「(こいつ何でもありだな)」

 

身体が温まったところで

 

「サウナ行きますか!」

 

サウナ室に入る。

「おぉ、サウナ室から浴室が見渡せるのか。開放感あって良いね」

座って向かい側の壁がガラス張りであった。

最上段に座る轟。

 

するとちょうど20分おきのオートロウリュウが始まる。

サウナストーブ上に置かれた大量のサウナストーンにオートで水が 注がれる。

 

じゅわあああああああああ

 

「このロウリュウの心地よい音と熱さ、、、たまらんぜ」

体感温度は100℃ぐらいに上昇。

熱さの中にあるどこか優しい熱波に包まれる。

 

10分後、サウナ室を退出。

汗を流し、いよいよ本日のメインといっても過言では無い水風呂へ

「これがふいんの水風呂!」

「むきぃぃぃ!ぬのびきな!さっきもこのやり取りしたわ!」

あきれるトタッチ。

 

水風呂へ入水。

「ふあああ。水が滑らか?肌触りが良い?? なんていえばよいかわからんが今まで行ったサウナ施設と違うのだけはわかる!」

轟は東京染井温泉で初整いを経験して以降、 様々なサウナ施設を訪れていた。

「(うむむむ。サウナ入り始めて1ヶ月もたってないのにここまで水風呂の違いが判るのは凄いかもせん)」

思わず感心してしまったトタッチ。

 

「水風呂と言えば、この羽衣が最高だよなぁ」

「ぐへへへ!間違いない。 水風呂に浸かってると肌の表面がうっすら暖かくなる感覚。

この羽衣ってやつは、バレリーナが着てそうな薄い生地の羽衣が全身にまとわりつくのに似てるからそう呼ばれるようになったらしいぞい。」

「あと、この羽衣。 少しでも水流にさらされるとすぐ破けてしまうよな。このもろさ、 繊細さ。まるで俺のメンタルと同じだな。がはは!」

 

1分ほど浸かる。

 

そして水風呂の近くにある、カラフルなデッキチェアに寝そべる。

 

「お、お、来た来た!!うはぁ、整ったあああ!!」

 

待ってましたと言わんばかりにトタッチが金色に輝き出し、 右手にヴィヒタを装備。

そしてちらかりに切りかかりにいく。

 

「ぬええええ、ヴィヒタ爆裂大根g...

 

すると、 女子風呂の方角からトタッチと同じぐらいのサイズのペンギンらしきやつがちらかりに突撃する。

 

「ぺぇぇぇん!マイティウォーターフォール!!」

 

激しい水流がちらかりに襲い掛かる。

ちらかりは水流とともに消失していった。

 

 

「実は私もGS(ゴットサウナー)でした〜!」

休憩室で氷河は明るく公言した。

 

「むぅぅぅ!僕ちんに気づいてたはずなのになんで無視したんだい!」

トタッチは腕を振り回し問う。

GSは自分に憑依したサウナ神だけでなく、他のサウナ神も見えるようになる。

 

「隠しててごめんやでぇ。今回はどうしてもあのちらかりを自分の手だけで消失させたくてねぇ」

「はてててて?? なんでそんな隠す必要があるにょ?言ってくれれば協力したにょに!」

「ひ・み・つ♡ 誰にだって言えない秘密なんてあるものよ!」

ウィンクして、ぶりっ子ぽい喋りで話す。

トタッチはこれ以上は踏み込まない方が良いと思い沈黙する。

 

「で、このかわいいペンギンは私の相棒 サウナ神『ギンP』よ。よろしくね!」

「って聞いてる?轟?」

さっきから会話に参加していなかった轟。

氷河に不意に話を振られた轟

「う、美しすぎる、、(あ、あぁ聞いてるよ)」

セリフと発言が逆転してしまう。

 

慌てる轟にさらに追い討ちをかけるように生暖かい何かが鼻から出てきたのを感じた。

鼻血である。

 

「え、ちょ轟ぃ!大丈夫??のぼせた??早よ横になり!」

氷河は慌てて轟を介抱する。

 

少し火照った頬、透き通った肌、 そしてほのかに香るシャンプーの良いにおい。

どうやら、轟はサウナあがりの氷河があまりに美しすぎて興奮しまくってしまったようだ。

「(女性が一番美しいのはサウナを出た後の1時間、か。 この名言作ったフィンランド人とは仲良くできそうだなぁ)」

轟はしみじみと思いながらも介抱された。

 

「やれやれ、轟は最後の最後まで気持ち悪かったなぁ」

あきれるトタッチ。

 

轟たちのサウナ旅はまだまだ続く。

 

【第2話-1】女性が1番美しいのは、サウナを出た後の1時間 【神戸クアハウス】

 

「美しすぎる」
サウナあがりの世界で一番美しい女性に俺は目が釘付けになっている。
少し火照った頬、ゆで卵の如くツヤツヤで透き通った肌、 男心をくすぐるうなじ。
サウナで整ったはずの心が乱れされていく。
 
俺の名前は轟大車輪。
名前に車が5つ付くが、マリオカートはいつも最下位だった男だ。
そんな俺は社会人1年目。
会社の研修が終わり、勤務地が奈良に決まった。
奈良に引っ越して1ヶ月。 まだまだ仕事では覚えることが山のようにあり、 未だ新生活には慣れない。
 
それを嘲笑うように、 俺のまわりをうようよと目障りに飛び回る全長30㎝ ほどのぶさいく面の狸。
こいつはサウナ神である「トタッチ」である。
とあるきっかけで轟に憑依することとなり、ともに全国のサウナ施設を駆け巡っている。
 
「詳しく第1話をみてみてよん!」
「メタ発言やめい」
 
そして俺は今、とある女の子のバイクの後ろに乗っている。
はっきり言って世界一ウヒョヒョヒョイな状況ってわけだ。 
 
彼女の名前は「氷河水沙」
黒髪短髪で、顔はボーイッシュ。陰気とは対局の性格で超楽観的なやつだ。
小学生の時からバレーをしており、 高校時代は日本代表に選出されたこともある。

また、容姿端麗で男からの人気は絶大を誇る。
そして皆には秘密にしたかったが、彼女は巨乳である。
 
轟とは大学のサークルで仲良くなった。
同学年で趣味も合ったため、社会人になっても時折 連絡を取っていた。
まあ、彼女は無類のサウナ好きで、轟がサウナに行くようになったことを知った際はかなり喜んでいた。
 
「サウナ好きなん もっと早よゆーてほしかったわぁ! ってことで明日にでもサウナ行こや!どーせ轟 暇やろ?」
 
轟に喋る隙も与えず


「んじゃ、明日轟の家の近くまで迎えに行くから~」
「あ、ちなみに行くとこは神戸クアハウスね!」
てな感じで、氷河の半ば強引な決定によりサウナ「 神戸クアハウス」に行くことになった。

「(え、俺の意思はどこへ行った?)」
 
ということで次の日の朝、 轟の家の前に立ちはだかる氷河。
全身、黒色革ジャンで包まれ、 峰不二子にひけをとらないボディライン。
ボーイッシュな顔つきの彼女には革ジャンはより可愛さとカッコ良さを際立たず。
極めつけにイカついアメリカンのバイクを添えることでもはや芸術と化す。
「お待たせ~!んじゃ、いこかぁ!」
「お、おっふ!」
氷河の美しさに見とれていた轟は思わず聞くに堪えない声を出してしまう。
幸い氷河には聞こえてなかったが、トタッチには聞こえていた。
「(プククッ!無様な声出してて草)」
そうして、氷河に連れられ神戸クアハウスを目指して出発した。
 
「いやぁ、私の周りにサウナ好きが少なくてねぇ。 今日は来てくれて嬉しいわぁ!」
しみじみと氷河は言う。
「いやいや、こちらこそ!ちょうどサウナ行きたかったからな!( ほぼ強制連行だったけどな 。)」


絶世の美女のバイクに乗れてご満悦の轟。
「(生きるってこういうことをいうんだね)」


すでに心が整ってますオーラをビンビンに出す轟に若干引き気味のトタッチが轟に小声で話しかける。
「実は偶然にも ちらかりが神戸クアハウスに突き刺さっているらしいんだ。」
「え、なんでちらかりがあるってわかるんだよ。まぁでも ちょうどいいや。整うついでにちらかりを消失させようぜ。」
 
ちらかりとは日本各地のサウナ施設にランダムに出現する黒い閃光のこと。
ちらかりはその周辺地域に「ちらかりウイルス」をバラまき、人間の人体、特に脳に悪影響を及ぼすと言われている。
そんなちらかりを消失させる方法はただ一つ。
サウナ神を憑依させた人間(通称:GS  GOD SOUNAR)がちらかりが刺さったサウナ施設で整い、 それに呼応し覚醒したサウナ神がちらかりに攻撃をすること。
この方法以外にちらかりを消失させる方法はまだ見つかっていない。

ちなみに神要素が皆無なトタッチもれっきとしたサウナ神なのである。
 
「やれやれ、とんでもないことに巻き込まれちっまってるなぁ」
「轟ぃ、なんか言ったぁ?」
「あ、いや、何でもない!」
このことを話しても氷河は信じてくれないどころか馬鹿にされそう なので、黙っておくことにした。
 
奈良から約2時間、無事 神戸クアハウスに到着した。
「ふぅぅ、やっと着いたぁ」
バイクを降り、腕を伸ばす氷河。


「運転ありがとな!水沙!人生で一番快適な旅だったぜ!」
「しんど笑 いいって笑 轟も2時間座りっぱなししんどかったやろー」
「(うぇぇ、轟のやつ冗談で言ってないだろうなあ)」

 

果たして、轟は惚気けてばかりでサウナで整うことはできるのか。

 

続く。 

【第1話】サウナの人生初整いは一生忘れない【東京染井温泉SAKURA】

俺の名前は轟 大車輪。

 

名前に車が5つもつく珍しい名前だ。

こんな名前して運転免許の車校の仮免5回落ちたのは皆に内緒にしている。

 広島県出身の社会人1年目だ。


俺は今、人生初めてサウナで整っている。


「ほ、ほげぇぇぇぇ」


頭がグワングワンする。だが、気持ちいい。

めまいに近いがまた違う感覚。そして全身のあるゆる血管に幸福が流れている。

外の世界と自分の境界線が曖昧になっていく。


なんだこれは??


ここは「東京染井温泉SAKURA」

俺はその露天風呂のすぐそばに座り込み、整っていた。


「うふふふ、これこそが整い。人生初整いは特に別格の気持ち良さ。一生忘れることはないんだよーーん!」


甲高い声で轟の脳内に直接語り掛ける。

そんな彼の名前は「とたっち」


サウナ神と名乗っており、とあるきっかけで轟に宿ることとなった神様である。

 


「福利厚生良くて、休日いっぱいあるとこにしか就職はしねぇ!」


2021年4月、轟は新入社員として大手食品メーカーに営業職で入社した。

その会社で4月1日から2週間ほど研修があるため、本社の東京で2週間ホテル住まいをすることに。


研修期間中も土日は休みであり、東京に友達の少ない轟は暇でやることがなかった。

轟の趣味は散歩で、知らない土地を目的もなくブラブラ歩くのが好きだ。


なので、ホテルの最寄り駅から電車に乗り、気分で駅を降りその周辺を適当に散歩をすることにした。

 


そして降りた駅が山手線は巣鴨駅。

この選択が後の轟の人生の歯車を大きく動き出したことをこの時はまだ知らない。


駅を降りてすぐ近くに染井霊園という墓地がある。


「桜が綺麗やのぉ」


染井霊園に満開に咲く桜に見とれる。

ヒラヒラ舞う桜の花びら、春の匂い、社会人になっり期待感で楽しみな反面、社会人としてやっていけるのかどうかの不安感。


様々な心情が複雑に入り乱れる中、桜の木の下をブラブラ歩いていると、狸型の岩が落ちていた。


「なんじゃこれ?」


轟は目を見張る。

大きさはだいたい直径30cmほど。

一見、コンクリートのような材質だが、明らかに地球外からやってきたと言わんばかりの異質で神々しいオーラを放っている。


轟はそれを感じつつも、危機管理能力がアホみたいに低い轟は頭で考えるより先に岩を持ち上げた。


「よいしょ!!」


大きさの割にかなり重い。が、無駄に馬鹿力な轟はなんとか持ち上げれることができた。


すると岩があった部分はいかにも深淵に繋がってそうな直径20cmほどの穴が空いている。

程なくして、その穴から直径1mはある黒い閃光が無数に上空へ舞い上がり、上空で四方八方に飛び散って行った。


「な、なんじゃこりゃぁぁぁぁぁ」


轟は腰を抜かした。

すると、持ちあげていた狸型の岩が光り出し、狸のような物体が出てくる。


「な、な、なんじゃこりゃぁぁぁぁぁ」


またしても腰を抜かす轟。腰を抜かしすぎである。

光り出した岩があまりに眩しいので、思わず目をつぶる。

目をつぶった刹那、轟の頬に強烈ビンタが飛んでくる。


バチコーーーーーン


「おぎゃぁぁぁぁ」

「きぇぇぇぇ!!やってくれたなぁぁあ!!このくそがきぎゃああ!早くその岩を元の場所に戻せぇぇぇぇ!!」


轟は慌てて元あった場所に岩を戻す。


その岩から飛び出してきたのは「とたっち」と名乗るサウナ神であった。


顔面 間抜け面の狸で、毛並みは茶色。

体長は30cmほど。

たぬきのクセに二足歩行しており、しっぽがとてつもなく長い。

常に3mぐらいの高さを浮遊しており、轟を見下ろしている。


目の前の状況に困惑する轟。


そんな轟にとたっちは

ぐぬぬぅ!今は時間がない!あの黒い閃光『ちらかり』が刺さったサウナ施設で早く整わないと取り返しのつかない事になるにょお!」


とたっちは指を指す。

その先には「東京染井温泉SAKURA」があり、なんと施設中央に黒い閃光「ちらかり」が突き刺さっている。

突き刺さった「ちらかり」は上空を突き抜けており、テッペンが見えない。

そして僅かながら黒い蒸気を発生させており、周辺の空気が少しずつよどんでいくのがわかる。


「なんじゃありゃぁぁぁぁ!!」 

叫び散らかす轟。


そんな轟をとたっちは「東京染井温泉SAKURA」へ連れていこうとする。


「ち、ちょっと待って!今からあそこいくのか??そもそも『ちらかり』ってなんだよ??あと、整うってなんだよ??急展開すぎるわ!」


「ぎょええええ!!質問が多いにゅぁあ!!今は答えてる場合じゃない〜!!頼むからは早く整ってくれぇぇい!!」


手足をバタバタ振り回し焦りをみせるとたっち。

駆け足で東京染井温泉へ向かう。

 

 

「(うわぁ、東京とは思えない緑っぷりじゃのお)」


東京染井温泉SAKURAの施設には草木溢れる日本園庭がある。

そこを抜けると入口がある。


靴を下駄箱に入れ、フロントで鍵を預ける。

木造ベースの和風な高級旅館を思わせる館内を通り、脱衣場へ急ぐ。


とたっち「早く脱げぇぇぇぇ」

轟「うるせぇ!!急いでるわぁ!!」


脱衣所の人らの視線が集まる。


とたっちの姿はサウナ神を宿した人間以外には姿は見えず、声も同様に聞こえたりすることはない。


「あ、すんません、、」

周りの人にヘコヘコ頭を下げる。


「ったく、、騒がしいやつめ」

「お前に言われたくないわ!」


とか、話している間にすっぽんぽんになり、浴場に入る。


「うひょひょい!まずは身体を清めるぞい!」

「清めるって身体を洗うってことか?」

「そう!先に身体洗うのはマナーだにょ!けど、サウナ前に身体を洗うことにはメリットがあるんだよん!身体洗って体の毛穴の汚れをとることでサウナでより発汗を促進させるんだじょ!結果、女の子にモテる美肌が手に入るっつぅ素晴らしすぎる話だよん!」

「モテる美肌ねぇ」


気だるそうに轟は言うが、これ以上ないぐらい念入りに身体を洗う。


「むふふ!次は温泉入って下地を作れ!」

「下地を作る?」

「身体をポカポカ温めることや!この下衆が!」

「急な悪口」


轟は内風呂である温泉に浸かる。

「あぁ、気持ちええわぁ、、、」

「下地作ることでサウナでより汗をかきやすくなるんだどぉ!」

「はぁ、、ん? てか、その整う? ためにはサウナじゃなくて温泉じゃダメなのか??」

「むぅぅ、、ダメってわけじゃないけど、とたっち様的には温泉よりしっかり汗をかけるサウナの方が整った時のより気持ち良くなれるにゃあ。まぁ詳しくはまた轟がサウナハマった時話してやるよん!」

「(整うって気持ちええもんなのか)」


2,3分浸かり、身体が火照ってきたところで


「さぁ!サウナ行くぞい!」


と、ここで轟がボソッと

「俺、あんまサウナ好きじゃないんよぁ。熱いし。」


と、ここでとたっちの2度目の強烈ビンタ。


「あぎゃああぁぁ!!何すんじゃ!!このくそ狸ぃぃ!」

「むきぃぃぃ!!黙ってついてこい!このヘタレチキン!おたんこなす!!サウナの良さを教えてやるぅぅう」


ブサイクに喚き散らかすとたっち。

だが、どこかワクワクしているようにみえた。


サウナ中に入ると、ムワッと熱気とご対面。それと共に微かなヒノキの香りがする。

サウナは相変わらず熱い。

だが、イメージしていたサウナの感じと少し違うことに気づく。


「湿度が高い??」

「よくわかりましたね。湿度が高いと実際の室温よりも体感温度は高く感じるのです。」


とたっちの口調が180°変わっている。

ブサイクで落ち着きのないから表情から一転し、悟りを開いたような穏やかな表情になっている。


「お前誰だよ」

「サウナ神・とたっちですが、どうかしましたか?」

「キャラぶれすぎだろ」


7段あるタワーサウナ。

1段上がるごとに温度が高くなる。


「上行くと熱いなぁ。2段目ぐらいでいいか。」

と、2段目に座る。


「熱いほうが整った際に気持ちいいですよ。騙されたと思って最上段行ってみてください。」


ニッコリと笑うとたっち。


「はぁ。(いい加減、整うってやつ教えてくんねぇかなぁ)」

轟は言われるままに最上段に座った。

すぐに大量の汗が全身から吹き出す。


「熱いけど、意外と耐えれるもんじゃのぉ、、、むしろなんか心地よい気がするし」


轟が座ってすぐにオートロウリュウが始まった。


天井の噴き出し口から水が放出。

サウナストーブの上に置いてある無数のサウナストーンにかかる。


ジュワーーーーーーーー


と心地よい音が弾ける。

と、同時に熱々の蒸気が轟たちを襲う。


「あちっっ!!」

轟は思わず声に出してビクッとしてしまう。


「ん?だが、悪くない?むしろ心地よいというか。マッサージで言う痛気持ち良い的な。」

「うふふ!そうです。これが本来在るべきサウナの姿なのです。先程のはロウリュウと言って、サウナストーンに水をかけて蒸気を発生させることを指します。

サウナの本場・フィンランドでは『ロウリュウ(蒸気)にはサウナの魂あり』とことわざがあるぐらいサウナにロウリュウは必要不可欠なのです。」


「ほぇぇ。たしかに。今まで入ったサウナはドライで皮膚がひりつく感じに苦手意識あったけど、湿度が変わるだけでこんなにも変わるもんなのかぁ」

「そうなんです、、日本ではその魂の抜けた不完全な形のままサウナが普及してしまった結果、サウナに苦手意識を刷り込まれた人が大部分になってしまいました。」


とたっちは少し悲しそうな表情をする。


「ところでサウナはどのくらいで出ればいいんじゃ?そろそろ出たいんやが」

「目安はもうそろそろ出たいなぁ、限界だなぁってストレスを感じ始めたぐらいを目安に退出するのをオススメします。時間的な目安は5-10分ぐら.......


「もう限界じゃ!!」

サウナ室を颯爽と出る。

「ふぅ、、熱かったぁ、、、」

「で、次はどうすればいいんだ?」

「次は水風呂に入ります。水風船に入る時間の目安はサウナ滞在時間の3,4分の1。まぁだいたい1-3分ぐらいですかね。」 

「わかった!」

「汗はしっかり流してから入ってくださいね!」


汗を流し、水風呂に恐る恐る足をつける轟。

そして意を決し、思い切って水風呂に入る。

「ええぃ!!」


バシャン


「ふぉぉぉ!!冷でぇぇぇぇ、、

入った瞬間は冷たさに抵抗あったけど、すぐにその冷たさが心地よくなってきたぞ、、、」

「うふふふ。慣れたら病みつきになりますよ。」


1分ほどして水風呂を出る。


「あれ、なんかめちゃフワフワする。それに水風呂あがって身体は冷えきってるはずなのにポカポカするのぉ。」


「おひょひょい!ええやないかい!!そしたら早よどこに座るんだよんよん!」

「(あ、ブサイクな口調戻ったなこいつ)」


轟は外の露天風呂のふちに座り込む。

すると明らかな体の異変に気づく。


「(うぉぉぉぉ!!全身がふわふわする!?それに凄い多幸感!!なんじゃこりゃ気持ちよすぎるぞ??)」

あまりの恍惚感に轟は顔のニヤケがとめられなく、非常にみだらな表情になる。


「あ、もしかしてこれが、、、」


とたっちはニッコリと答える。

「チキチキブーーーン!!!

人生初整いおめでとう。これが整いってやつだよーん!!!」


すると とたっちの全身の毛並みが金色に輝きだし、ドラゴンボールスーパーサイヤ人のようなオーラを出し始める。そしてどこから取り出したのか右手にヴィヒタを持ち、黒い閃光「ちらかり」に切りかかる。


「うぬぅぅぅぅ!!ヴィヒタ 大回斬り!!!!」


ズバババババ


「ちらかり」が徐々に崩れていき、黒いモヤが晴れ始める。


と、同時にヴィヒタの葉が多数舞う。

ヴィヒタの甘い香りがフワフワと漂い始める。


「あぁ、良い香りやぁ」

どうしようもないぐらいブサイクな表情になる轟。


とたっちのヴィヒタ大回転斬りにより、東京染井温泉SAKURAに刺さっていた「ちらかり」が完全に消失した。


「整いました!」


とたっちが両手を合わせ目をつむり、キリッとした声で叫ぶ。


「なんとかなったのか?」

ブサイクな表情が多少マシになった轟は尋ねる。


「んにゃ!まだこれは数百個あるうちのひとつに過ぎない!日本各地の『ちらかり』を1つずつ消失していかないと日本が大変なことなっちまうにょ!」

「大変なことって、、、『ちらかり』ってそんなヤバいものなのか?」

「『ちらかり』は別の呼び方で『エクセス・デジタル』と呼ばれるにょ!また詳しくはいずれ話す!さぁ次のサウナ施設に行くぞい!」

「あーいやこの後はホテル帰って星のカービィをしたいなぁと思っ....」


ばちこーーーん!!


本日3度目のビンタが鳴り響く。


「元はと言えばこうなったのはてめぇのせいだどぉぉぉ!!黙ってついてこいやぁぁぁ!!」

「とほほ」


こうして轟 大車輪のサウナ巡りの旅は始まったのである。